第5回原子力委員会
資料第3号

 

(株)ジェー・シー・オー東海事業所臨界事故による人への線量の状況と今後の取組みについて

平成12年1月31日
科学技術庁事故調査対策本部

 

1.はじめに

 昨年9月30日に発生した(株)ジェー・シー・オー(以下、「JCO」という。)東海事業所臨界事故による人への放射線の線量については、科学技術庁事故調査対策本部(以下、「対策本部」という。)から、原子力安全委員会「ウラン加工工場臨界事故調査委員会」(以下、「事故調査委員会」という。)に対して、昨年10月15日の第1回事故調査委員会以降、状況が判明する都度、放射線の線量が実測された者についての染料の状況を報告したところである。
 その後、周辺環境の占領評価や行動調査に基づく個人の線量を推定する作業、事故調査委員会に報告した内容に関し実効線量当量への換算等の見直しをする作業等を進めてきたところであり、また、JCOにおいても、関係機関の協力を得て、敷地内の従業員等の線量を推定する作業が進められ、その結果が科学技術庁に報告されたところである。それらの内容を以下に報告する。
 併せて、本年1月25日にとりまとめられた原子力安全委員会健康管理検討委員会(以下、「健康管理検討委員会」という。)の「中間とりまとめ」を踏まえつつ、上述の現在までの作業の内容と事故調査委員会に報告した内容をとりまとめて、事故の状況の把握と長期的な健康管理の取組みの具体策の策定という観点から、現在までのJCO東海事業所臨界事故による人への放射線の線量の全体像をとりまとめて報告する。
 なお、今後もさらに現場で何らかの作業をしていた人や周辺住民等について実測や推定による線量の評価の作業が進められ、その内容がとりまとめられた場合は、その時点で報告する。

2.事故調査委員会後の現在までの作業の結果

(1)周辺住民等の個人の推定数量(別添1)
@作業内容:
 周辺住民等の個人の線量については、対策本部と放射線医学総合研究所が昨年11月末に実施した事故発生当日の9月30日と翌10月1日の個人の行動調査の結果と、対策本部が昨年12月11日に事故調査委員会に報告した周辺環境の線量評価の基礎資料を基に、放射線医学総合研究所が日本原子力研究所の協力を得て、家屋の遮へい効果等も考慮した推定作業を実施し、実効線量当量を算出した。
A対象者:
 行動調査を実施したJCO東海事業所敷地周辺の避難要請の出された概ね350m以内の区域内に居住又は勤務する者265名から、事故発生から20時間後までの間に1km以内に留まっていなかった58名とホールボディ・カウンタの実測により線量が評価されている7名を除いた200名について、行動調査に基づく推定による線量(以下、「推定線量」という。)の結果が出された。
B結果:
 下記3(3)の第7表に示す通りである。

(2)敷地内の従業員等の実測線量の見直しと推定線量(別添2)
 JCOから科学技術庁に対する事故報告の第3報(平成12年1月31日付)により、敷地内の従業員等の実測に基づく線量(以下、「実測線量」という。)の見直しと推定線量について、次の内容の報告がなされた。
(A)水抜き作業とホウ酸水注入に従事した者の実測線量
@作業内容:
 水抜き作業とホウ酸水注入に従事した者の実測線量については、事故調査委員会に対して、ホールボディ・カウンタによる実測線量として実効線量当量の暫定値と線量計による実測線量として1cm線量当量の値が報告されていた。今般、ホールボディ・カウンタの値について、核燃料サイクル開発機構の技術的支援を得て詳細な再評価を行い、線量計による実測線量について実効線量棟梁に換算して算出した。
A対象者:
 水抜き作業に従事した18名とホウ酸水注入に従事した6名。
B結果:
 下記3(3)の第2表に示す通りである。
(B)事故時に敷地内にいたその他のJCO従業者等の実測線量
@作業内容:
 (A)に属さず、また事故発生時に作業に従事していた3名を除く、事故時に敷地内にいたその他のJCO従事者等の実測線量については、事故調査委員会に対して、ホールボディ・カウンタによる実効線量当量の暫定値が報告されていたが、同様に詳細な再評価を行なって見直した。
また、フィルムバッジと線量計の実測線量を用いて実効線量当量を評価した。
A対象者:
 ホールボディ・カウンタで実測された36名、フィルムバッジで実測された12名、線量計で実測された3名の合計から、実測が重複する2名を除いた49名。なお、フィルムバッジを着用していた者の数が、その後のJCOの調査により22名から12名に訂正された。
B結果:
 下記3(3)の第3表に示す通りである。
(C)敷地内にいたJCO従業員等の推定線量
@作業内容:
 敷地内にいたJCO従業員等で何らの実測もなされなかった者については、上記(1)の周辺住民等の個人の線量と同様に、核燃料サイクル機構の技術的支援により作成された敷地内の場の線量評価とJCOが亜一子した個人の行動調査から線量が推定された。この推定作業は、JCOが核燃料サイクル機構や日本原子力研究所の技術的支援を得て実施した。
A対象者:
96名。
B結果:
 下記3(3)の第6表に示す通りである。

(3)その他
 対策本部において、核燃料サイクル開発機構の協力を得て、防災業務関係者の実測線量及び周辺住民等の実測線量におけるホールボディ・カウンタによる実効線量当量の暫定値について詳細な再評価を行なって見直した。
その結果は、それぞれ下記の3(3)の第4表と第5表に示す通りである。

3.人への線量の全体像

 対策本部としては、事故調査委員会2報告した内容とその後行なわれた作業の内容をとりまとめて、現在までのJCO東海事業部臨界事故による人への放射線の線量の全体像を現時点において、次のように3つに整理した。

(1)確定的影響が発生する又は発生するおそれのある線量
 この線量の該当者は、事故発生時に作業に従事していたJCOの3名である。

第1表 確定的影響が発生する又は発生するおそれのある線量
作業者線量(グレイ・イクイバレント)
16〜20
6.0〜10
1〜4.5

(注)グレイは、放射線の種類によらず吸収されたエネルギーを表す単位であり、同じ1グレイでもガンマ線よりも中性子線が2〜10倍大きいことになる。このため、グレイ・イクイバレントは、高線量被ばくにおける、急性影響に特有な生物学的効果を考慮して影響の程度を表す単位となっている。臨床的にガンマ線を被ばくした場合のグレイの単位に相当する。

(2)確定的な影響が発生する又は発生するおそれのある線量ではないが、50ミリシーベルト*以上の線量
この線量については、JCO従業員等、防災業務関係者や周辺住民等を含めて、該当者はない。

*「50ミリシーベルト(臓器線量当量)以下の線量では、がんの過剰な発生の確率は極めて小さく、統計的にがんによる過剰死亡は検出されていない。」(健康管理検討委員会の「中間とりまとめ」)

(3)上記以外の線量
 この線量では、確率的影響の発生の可能性は極めて小さく、影響を検出することはできないと考えられる。
(A)実測線量
@水抜き作業とホウ酸水注入に従事したJCO従業員等の実測線量対象となった24名の状況は、次の通り。

第2表 水抜き作業とホウ酸水注入に従事したJCO従業員等の実測線量
実測線量(ミリシーベルト)人数
0以上5未満
5以上10未満
10以上15未満
15以上20未満
20以上25未満
25以上30未満
30以上35未満
35以上40未満
40以上45未満
45以上50未満
24

(注)1.原子炉等規制法に定める放射線業務従事者の緊急時作業に係る線量棟梁限度は100ミリシーベルト
(なお、24名中には放射線業務従事者でない1名が含まれている。)。
2.線量計及びホールボディ・カウンタのよる実測線量については、各人の行動記録から計算により推定した値(0.2〜5.4ミリシーベルト)を加算した。


A事故時に敷地内にいたその他のJCO従業員等の実測線量
対象となった49名の状況は、次の通り。

第3表事故時に敷地内にいたその他のJCO従業員等の実測線量
実測線量(ミリシーベルト)人数
0以上5未満24
5以上10未満11
10以上15未満
15以上20未満
20以上25未満
25以上30未満
30以上35未満
35以上40未満
40以上55未満
45以上50未満
49

(注)1.原子炉等規制法に定める放射線業務従事者の被ばく線量当量は限度は50ミリシーベルト/年(なお、49名中には放射線業務従事者でない3名が含まれている。)。
2.ホールボディ・カウンタで検出された36名のうち実測後に臨界終息前に事業所内に戻った10名と線量計の2名については、各人の行動記録から計算により推定した値(0.1〜0.8ミリシーベルト)を加算した。なお、ホールボディ・カウンタの10名のうち1名については線量計により実測値を加算した。また、11名についてはフィルムバッジの実測値を用いて評価した。


B防災業務関係者の実測線量
対象となった60名の状況は、次の通り。

第4表 防災業務関係者の実測線量
実測線量
(ミリシーベルト)
政府関係機関職員
(人数)
消防署員
(人数)
0以上5未満5354
5以上10未満
5760

(注)1.「防災指針(平成11.9月改訂)」によれば、防災業務関係者(但し、事故が発生した原子力発電等の放射線業務従事者は除く)の被ばく線量当量限度は50ミリシーベルト。
2.政府関係機関職員とは、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の職員。


C周辺住民等の実測線量
対象となった7名の状況は、次の通り。

第5表 周辺住民等の実測線量
推定線量(ミリシーベルト)人数
0以上5未満92
5以上10未満
10以上15未満
15以上20未満
96

(注)原子炉等規制法に定める放射線業務従事者の被ばく線量当量限度は50ミリシーベルト/年(なお、96名中には放射線業務従事者でない38名が含まれている。)。

A周辺住民等の個人の推定水量
対象となった200名の状況は、以下の通り。

第7表 周辺住民等の個人の推定線量
推定線量
(ミリシーベルト)
東海村住民(人数)
(周辺事業所勤務者を除く)
那珂町住民(人数)周辺事業所で勤務
していた者(人数)
0以上5未満
(うち、1以上5未満)
78(36)24(0)78(56)180(92)
5以上10未満15
10以上15未満
15以上20未満
20以上25未満
計(うち、1以上)90(48)24(0)86(64)200(112)

(注)1.原子炉等規制法に定める周辺関し区域外の線量当量限度は1ミリシーベルト/年。
2.対象者は、事故当日、避難要請の出された概ね350メートル以内の区域に居住又は勤務していた者。


4.まとめと今後の健康管理の取組み

(1)まとめ
 対策本部は、事故の状況の把握と今後の長期的な健康管理の取り組みの具体策の策定という観点から、実測線量と推定線量の状況の把握に努めてきた。
 その結果、現在までのところ、確定的影響が発生した3人の事故時作業者の方を除いて、すべて50ミリシーベルト未満でありことが明らかとなった。このレベルの線量においては、確定的影響は発生せず、また確率的影響の発生の可能性は極めて小さく、影響を検出することはできないと考えられるので、今回明らかになってきた状況のより適確な表現と周辺住民等の健康に対する不安への適切な対応の観点から、上記3(3)の「上記以外の線量」に区分される者は、「実測で線量が評価された者」又は、「推定で線量が評価された者」とすることが適当であると考えられる。ちなみに、現時点で、前者は140名、後者は296名となっている。
 この線量の状況を踏まえ、長期的な健康管理に取り組んで行くこととなるが、例えば、健康管理検討委員会の「中間取りまとめ」を踏まえ、周辺住民等に対する健康診断については、1ミリシーベルト以上の者119名とそれ以外の避難区域内の周辺住民等の88名の併せて207名が健康診断の希望者の対象となる。

(2)今後の健康管理の取組み
(A)周辺住民等
 科学技術庁としては、健康管理検討委員会の「中間とりまとめ」の考え方に従い、地元自治体とも連携・協力を図りつつ、次のように周辺住民等の健康管理に取り組んでいくこととしている。
@健康診断
 茨城県の協力を得て、年1回、独自に健康診断の機会を作る。
 対象者は、線量の推定値が1ミリシーベルト以上の者、又は避難要請区域内に居住又は勤務されている者で、健康診断の受信を希望する者。
 年1回の健康診断は、本年春(4月を目途)に実施する予定。
A健康相談・心のケア
 健康相談等については、これまでも実施してきたところであるが、本年2月以降についても、希望する全ての者を対象に、住民相談窓口における健康相談及び心のケア相談(電話相談)を実施して行く予定。
(B)JCO敷地内
 JCO敷地内において事故・臨界終息作業等により、被ばくした労働者の長期的健康管理については、労働省に設置された「東海村ウラン燃料加工施設事故に係る被ばく労働者の健康管理のあり方に関する検討会」で検討されているところである。

 影響の発生する最小線量、すなわち「しきい線量」が存在する影響を確定的影響という。これに対して、影響の発生に「しきい線量」がないと考えられている影響を確率的栄養という。発がん及び遺伝的影響以外の放射線健康影響は、すべて確定的影響である。


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